「箱根の山は天下の険」とうたわれた、箱根八里。八里というのは一里おおよそ4kmとして約32kmということで、小田原宿~箱根宿~三島宿の3宿の間の距離です。

現在では小田原から西も箱根湯本まで電車が走っており、湯本から三島までもバスがありますので、32kmを通して歩かなければならないということはありませんが、それでも交通の便が良いとは言い難いものがあります。
また、江戸から行っても京から行っても、海に近い小田原や三島から十数キロで一気に標高800m超まで登る箱根峠は、やっぱり東海道最大の難所には違いありません。

東海道、歩いてみようかな……というビギナーさんとも、「箱根峠って、どういう日程で越えたらいいの?」「靴や装備はそれなりのものが必要?」といった質問がたびたび話題に上るので、東海道・箱根越え経験者の皆さんからの意見をうかがってみました!

今回は、

質問!

1.小田原から三島の8里(約32km)、どういう日程にする?

2.登山靴は必要? お勧めの靴は?

と言った2点を取り上げます!

なお、小田原から箱根までの峠東側の坂を「東坂」、箱根から三島への西側の坂を「西坂」と呼びます。
「箱根」は便宜上、元箱根港から箱根関所(芦ノ湖に沿って平坦な道を歩く区間)の周辺とします。

アンケートとお寄せいただいたすべてのコメントは、こちらにまとめていますのでご参照ください!

【街道なうアンケート】東海道最大の難所・箱根峠、どのように越えましたか - Togetter

小田原から三島の8里(約32km)、どういう日程にする?

大きく分けて、次の3パターンが考えられます。
※ 主に、江戸から西に向かう行程で考えています。

計1日 ⇒ 小田原~三島を1日

一気に32kmです。山道ということを考えるとかなりの健脚でないと辛いかと思いますが、行き帰りの交通手段が便利です。

計2日 ⇒ 小田原~箱根で1日、箱根~三島で1日

それぞれ16km程度。登り坂がちょっと大変ではありますが、通常の道筋で1日20kmほど進むペースでしたら手ごろな距離です。

計3日 ⇒ 小田原~箱根湯本か東坂の途中で1日、~箱根で1日、~三島で1日

登り行程となる16kmを分割します。東からの場合、区切る場所は電車の駅のある箱根湯本が便利ですが、もう少し進んでもバスがあるのでOK。全行程登り坂となる湯本~箱根の東坂をゆっくり登れるので、多少の余裕ができます。

西から江戸に向かう場合は1日めと3日めが逆になりますが、それだと1日めの登りが長くて厳しいので、西坂の途中でバスを使うのがいいかもしれません。ただ、東坂の石畳が滑るので下りはどうしてもゆっくりになるのと、箱根湯本~小田原宿は見どころが多いので、個人的には箱根湯本で切るのもありだと思います。

実際に歩かれた皆さんのスケジュールは?

上の2,3の計画では、箱根で1日を区切った場合の、その後のことも気になってきますね。泊まって連続で歩くか、一旦帰るか。ですが、ひとまずそれは置いておいて、皆さんのスケジュールを。

半数以上が、2日で越えたという回答でした! 湯本あたりで区切って3日という人がもっといるかと思ったのですが、皆さん健脚ですね! そして1日で越えた人が2割くらいいるのもちょっとビックリ。

まずは半数以上を占める、2日行程の皆さんの声です。

小田原⇒箱根⇒三島で2日行程

小田原をちょっと観光して歩きだし、湯本でお昼ごはん、ゴールは箱根。次の日に箱根から三島。このあたりが、一番多いパターンではないかなと思いますが、どうでしょうね。

同じ行程で、箱根に泊まった人も。

同じ2日行程でも、2日間日帰りの人と、宿泊して2日連続の人がいますかと思います。関東周辺からなら日帰り可能。でも、箱根に宿泊というのも旅行気分でいいですね!
遠方からのウォーカーの皆さんは、2日連続で歩かないとならないかもしれません。

箱根宿周辺(芦ノ湖あたり)はリゾートホテルや温泉旅館はありますが、他の旧宿場町にあるような手ごろな価格で泊まれるビジネスホテルなどはまずありません。
民宿などが見つかると良いのですけれど、全体的に観光地価格で高いので、バスで小田原か三島に降りてビジネスホテルに泊まるという選択肢もあるかと思います。

でも、せっかく箱根に来たんだから温泉に浸かってのんびりしたい??
箱根で1泊したという皆さんの宿泊場所についても、また聞いてみたいと思います!

かく言う「ちゃらぽこ」ぱきらは、最初に越えた時は小田原~箱根~三島の2日行程で、箱根で1泊しました。これは15年以上前の話でして、当時は街道近くにユースホステルがありそこに泊まったのですが、今はもうないようです。
⇒ 東海道をどう歩く?~街道歩きのスケジュール・ちゃらぽこ ぱきらの場合

2回目はやはり同じような行程で2回でしたが、日帰り×2日。その後はみんなで歩くイベントが多いということもあって3回に分けています。

さてさて次に、1日で越えてしまった健脚な皆さん!

小田原⇒三島を1日

ちょっと大変そうですね! そこそこ足に自信のある方、登山などで慣れている方、他の街道などで経験済みの方なら行けそう?

けれど日ごろそこまで歩いていない人でも1日で越えたという話をちらほら聞きますので、健康と体力に問題のない方なら可能かと思います。また、疲れたらバスで帰るという選択肢もありますので、まず歩きだしてしまうというのもひとつの手。時間はかかりそうなので、日暮れの早い時期とバスの時間にはご注意を!

小田原⇒箱根湯本か東坂の途中⇒箱根⇒三島で3日

そして3日行程の場合。東からの箱根越えは、電車で帰るなら箱根湯本が区切りですが、バスがあるので箱根湯本に限らず途中で区切るのもOKです。西からの場合、西坂の途中で区切るとしたらバスで三島に戻るようになりますが、バス路線からそれほど大きく外れないので可能です。

安全にゆっくり歩く意味でも、観光しながらという点でも、個人的には3日くらいの余裕のある行程がおススメです。

※畑宿は、箱根湯本から箱根の間(湯本から7km、箱根関所まで5kmほど)です。一里塚や数軒の商店などがあります。

前述のとおり、小田原(箱根湯本)~箱根、箱根~三島の区間はバスが走っていますので、「疲れたら(天気や条件が悪くなったりしたら)そこで終わり」というのも可能です。
綿密なプランを立てなくても歩けるのが、天下の大幹線・東海道の良いところ!

ただし、東海道は石畳の旧道で、バスが走っているのは車道の方です。東海道も時々国道に出ることがありますし、バスの路線から大きく外れる区間はそれほど多くありませんが、多少の移動は必要になるので、バス停まで歩く余力は残して切り上げましょう!

なお、観光を楽しみたい!という方には、こんなご意見も。

東海道を歩く、どちらかと言えば大多数の皆さんは、箱根越えは人生で1回しか経験されないかもしれません。箱根は山道なのでそれほど遠くへ寄り道するような場所は少ないと思いますが、お寺や寄木細工工房や甘酒茶屋、関所などの見どころがありますので、せっかくだからスケジュールに余裕を持って観光しながら行かれるのも良いかと思います!

続いては、箱根を越えるためにはどんな靴がいいか、という問題について。

箱根東坂の石畳。角が揃っていなくて、谷筋で湿っているため、ちょっと滑りやすいです

箱根越え、どんな靴で行ったらいい?

これも「ちゃらぽこ」ではよく聞かれる質問です。

東海道の峠越えというと、ほかに薩埵峠、小夜の中山峠、鈴鹿峠などがありますが、いずれも山道は短い区間でそれよりも平地を歩く距離の方が長いので、普段履き慣れているスニーカーやウォーキングシューズをお勧めしています。

平地を長く歩くなら履き慣れた靴の方が快適ですし、峠のためだけに登山靴を持っていくのは荷物になってしまって大変ですね。なので基本は普段の靴でオッケー。

……というところなのですが、ただ箱根の場合は、ほぼ1日山の登り降りが続きます。なので、山歩きの装備でも無駄にはならないという考え方も。

それでは、実際に箱根を越えた皆さんは、どんな靴で歩いたか。お勧めの靴は?というのが次の質問です。

登山靴 vs. スニーカー どっちで歩いた?

4分の1の方が「登山靴で行って正解」だったとのことなので、箱根越えに関していえば、登山靴は使えそうです!

そしておおよそ3分の2の皆さんが、スニーカーで問題なかったとのこと。登山靴を準備しなくっちゃ……!と特別に用意する必要もないようですね。

ただ、この質問だと「登山靴」と「スニーカー」の間の「トレッキングシューズ」がないので、質問を改めました。

オススメは、登山靴/トレッキングシューズ/スニーカーのどれ?

トレッキングシューズが優勢。スニーカーでもOKか

これで見ると、半数の方はトレッキングシューズを推奨しています。登山靴とは行かないまでも、完全なタウンウォーク用のスニーカーよりはしっかりした靴が安心なようですね。

はい。箱根越えの大きな特徴として、「石畳」があります。箱根は普通のまち歩きともガチな山登りとも違って、石畳を歩く区間が長いです。

特に箱根湯本ー箱根の東坂は、谷筋に当たり杉並木もあって常に日当たりがあまり良くないので、天気が悪くなくても石畳が濡れていて滑りやすいという難点があります。
裏側がつるつるしたスニーカーだと、滑りやすくて不安という意見もありました。
靴底がそれなりに厚く、ゴツゴツした道でも足への負担が少なく、裏もちゃんと滑り止めの効いているという点で、トレッキングシューズが安心です。

日ごろから街道歩き、まち歩きをされている皆さんは、慣れたトレッキングシューズをお持ちかもしれません。あればそれでOK。なければ、今後の街道歩き、まち歩きのために用意されても良いかと思います。

トレラン用やランニング用のシューズも一定の支持あり

ランニング用のシューズというご意見も複数いただきました。軽さと履きやすさは魅力。

また、箱根の石畳はわらじで歩くのに優れているという話も聞いたことがあります。出来た当初の旅人は、わらじで歩いていたのですもんね。
足の裏でグッと掴みながら歩くのがベストと考えると、底の厚さにこだわらず、ホールド力のある靴もいいのかも。

興味のある方は、この機会に試されてはいかがでしょうか。くれぐれも、新しく買った靴は事前に履き慣らしておいてくださいね!

ここで登山靴をご検討の方に、ご注意です!

石畳が滑る……というお話をしてきましたが、ちょっと足を滑らせてもハイカットの登山靴なら捻る心配が少なく安心です。1日中石畳の道を歩く箱根越えは、登山靴も良いかと思います。登山靴には登山靴のメリットも!

ただし、登山靴を使う機会は、日ごろそれほど多くはないと思います。長く使わずにしまっていた登山靴は、靴底が劣化してはがれやすくなっています。(ぱきら個人的には、箱根越えイベントのたび登山靴の底がはがれる人を毎回1人か2人見ています!)

底がはがれてしまった場合、箱根では代わりの靴を買うことはできず、どうにかテーピングなどの応急処置でしのぐしかありません。とっても歩きにくいです。
滑りにくくても捻りにくくても、靴自体がダメになってしまったらかなり大変ですので、久しぶりに靴箱から出した登山靴を履くという方は必ず事前に履いて歩いて試してみてくださいね!

慣れない登山靴よりは、慣れたスニーカーの方が安心です! トレッキングシューズをお持ちの方は、それ一択で良いかと。
またお持ちでない方(登山もしない方)は、今後も使うことを考えると普段歩きに使えるトレッキングシューズの用意も一考の余地ありかも。

結論。どういう靴を選ぶ?

箱根は石畳という特殊性もありますが、日ごろからそこまで歩き慣れていない人でもハイキングに使う道筋ですので、極度に身構えなくても大丈夫です。ただし山の中なので、滑ったり転んだしてケガをしたり、靴が壊れてしまったりすると、かなり大変です。

山は山ですから、舐めてかかってもいけません。

  • 多少デコボコした道を歩いても足への負担がかかりにくい
  • 靴底がしっかりしていて滑りにくい
  • 履き慣れている

というあたりを念頭に、もしも新調される方は、歩きやすそうな靴を探して事前に慣らしておいてください。

おまけ。東海道・箱根越え、これがあったら便利!

ついでに靴以外の装備品について。

皆さんの報告や、ぱきらの経験から、箱根越えの装備として持っていくと良いモノを。

1.軍手

万一滑って転んで手をついた時の、手のケガ予防に。冬なら手袋をしているかもしれませんが、夏でも軍手をしていると安心です。箱根路ではつかまって歩くような木はあまりありませんが、そこらへんの木や岩などに手をつけるというメリットも。

滑り止めが付いているものや、スマホ操作用に指の先が切ってあるものなどもあり、100円ショップでも売っていますので、ひとついかがでしょうか。

2.ストック

急な坂道や滑りやすい場所で、あると断然安心です。荷物になるので常時持ち歩くのは面倒かもしれませんが、箱根越えの場合はさんざん書いてきた通り1日中登り坂または下り坂なので、無駄にはならないかと思います。

モチロン「ないとならない」というほどではありませんので、このためだけに用意するのもな……という方も多いと思いますが、これから中山道や大山街道なんかを歩かれるなら、この機会に用意するのもアリです!

3.服装は、長袖長ズボン。簡単な上着も持っていきましょう

もう当然ですが、転んでもケガが少なくなるように、夏でもあまり肌を出さずに行くのがベストです。熱中症や日焼け、虫刺されの予防にもなります。

ちなみに、芦ノ湖周辺は海抜900m近くあり、これは計算上(あくまで計算上ですが)海抜0m~100m以下の小田原や三島と比べると気温が5度以上低いことになります。到着が夕方ごろになると肌寒く感じることもありますので、簡単な上着は持って行った方が良いでしょう。

4.雨具

ハイキングコースとは言っても、山です。天気も変わりやすいです。前述の通り標高も高いので、平地とは天候が違うことも。念のため、雨具は持っていきましょう。滑りやすい石畳の区間で手を塞ぐことのないよう、合羽やレインコート、ポンチョがおススメです。

5.非常食

食べ物を買える場所は、ほとんどありません。箱根湯本~箱根の場合、湯本を出て少し行ったところにコンビニがありますが、その後は芦ノ湖までありません。(飲食店は2軒くらいあります)

ちょっとした食べ物(飴とか行動食とかが必要な方はそれ)は用意して行った方が良いと思います。自販機はときどきあるので、飲み物は必要以上に用意していかなくても大丈夫です。ただ、少なくなってきたら自販機を見つけた時に買っておきましょう!

それでは、東海道最大の難所・箱根越えが、思い出に残る素敵な旅になりますように!
安全に注意して、楽しく歩いてくださいね!

なお、今回アンケートにご協力くださった皆さま、どうもありがとうございました!
すべてのご意見を紹介したかったのですが、長くなるのでいくつか抜粋させていただきました。
繰り返しになりますが、今回のアンケートとお寄せいただいたすべてのコメントはこちらにまとめていますので、ぜひご参照ください!

⇒ 【街道なうアンケート】東海道最大の難所・箱根峠、どのように越えましたか - Togetter

次回のアンケート企画もどうぞよろしくお願いいたします!!

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