そもそも街道歩きとは?
もしもいま暮らしている社会に、飛行機や電車や車がなかったら――そんな想像をしたことはありませんか?
ある、という方も多いと思います。だって、いま当たり前にある交通手段が発達したのは、ほんのここ百数十年の間のこと。おじいさんのおじいさんくらいの時代までは、庶民にとって「移動」といえば「歩くこと」だったんですから。
でもそれじゃ、電車がなかった時代の人は遠くへ旅をしなかったのか……というと、そんなことはありませんよね。江戸時代に流行ったお伊勢参りも大山詣でも、伊能忠敬だって松尾芭蕉だって新選組だって弥二さん喜多さんだって、徒歩で旅をしました。
本当に歩いて旅をすることなんてできるの? いったいどのくらい遠くまで、歩いていくことができるの? 徒歩で旅をするって、どんな感じ?
……そんな疑問を抱いたら、街道歩きの第1歩を踏み出しかけていますよ!
思い切って、一緒に歩きだしてしまいましょう!
「街道」には、町と町を結ぶ数キロ程度の短いものから、東海道・中山道や山陽道のように地方と地方をつなぎ何百キロにも及ぶ長いものまで、色々あります。
「1日にひたすら数十キロ歩く」、「距離は短く、じっくり見て歩く」など、楽しみ方は人それぞれ。
長い街道は1回の旅で踏破するのは難しく、数回に分けて歩く人が多いです。
ある場所まで進んで一旦帰り、次の機会に電車でそこまで行ってまた歩く。 1日15~25キロのペースで、たとえば東京から京都の距離を、計20~30日ほどで歩けます。
旅というのは、目的地に行ってそこで観光を楽しむだけではありません。
旅する過程そのものを楽しみながら、自分の足で歩いて旅をする、究極のスロートラベルです。
街道歩きの楽しみって?
まずひとつには、自分の足で歩いていく達成感。いつもの散歩をちょっと長くして、隣のまちまで歩いていったときの感慨は、なかなかのものです。
それを続けていくと、隣の市町村、隣の県……。そしてその途中にあるまちをすべて味わえるのも、街道歩きの楽しさです。
次に、古い道筋やまちの形を探ること。
全国の主要道路の多くは、江戸時代に街道として、現在は国道や都道府県道として整備されています。
車の通行のために拡張されている部分も多いですが、新道やバイパスが作られたことにより、ルートを外れて旧道・廃道となった場所も多々あり、往時の面影が残っていることも。
昔さながらの道幅や古い町並みが残る通りを歩いたり、古地図や資料をもとに旧街道を見つけて歩いたり。
道やまちの成り立ちを知れば、きっと、風景の見え方が変わってきます!
そして古来から人の往来の多かった旧街道には、そこに住む人々、そこを通った人々の歴史がたくさんつまっています。歩くことで、何百年もの間に同じ道筋を歩いた人々の足取りを追い、それらの人々の旅を追体験することにもなります。
主要な道筋だったからこそ、そこに残る神社仏閣や名所旧跡、土地土地の名物も多く、それらを訪ね歩くのもまた、楽しみのひとつです。
気軽に始められ、さまざまな楽しみ方ができる。それが街道歩きです。
観光地を目指しポイントをめぐる通常の旅では見過ごしてしまいかねない、特別な観光地でない普通の町に残る“何か”を発見しながら歩くことができるのが、歩いて旅をすることの醍醐味と言えるでしょう。
そして、自分の足で歩いて見知らぬ遠くの町へとたどり着いたときの達成感は、何ものにも代えがたい思い出となります。
歩くことが好き、歴史が好き、地理が好き、社寺をめぐる、素敵なまちなみを探す、江戸の昔の旅人の想いを味わう、などなど……歩くテーマは人それぞれ、 複合的な楽しみ方のあるのが「街道歩き」なのです。
もう少し興味がわいたら
⇒ 街道歩きのソボクな疑問 をご覧ください!