「街道」とは

「街道歩き」ってさんざん言ってるけれど、そもそも「街道」ってなんなんでしょう?

「街道」とは、ざっくり言ってしまえば主要道路のこと。
「街道歩きが趣味」という人は、「東海道」とか「中山道」とか江戸時代の旧街道を歩く人が多いので、このサイトで言う「街道歩き」では主に江戸時代からの道路を取り上げていますが、広い意味での「街道」はそれだけではありません。

古くは律令時代に都と地方を結んだ官道や、鎌倉時代に鎌倉と各地を結んだ「鎌倉街道」。また、近代以降に道の通称として「○○街道」とつけたもの。
さらに現代では、ドイツの観光地を模した「日本ロマンチック街道」や、名産物・見どころをまとめた「そば街道」「コスモス街道」のように観光や地域振興を目的として名付けたものなど、街道とつくものは数限りありません!

それではここで、街道の歴史を時代ごとに、さわりだけ見てみましょう!

古代の街道

律令制度により五畿七道が定められると、地方支配のために都から各国府を連ねる官道が整備されました。地方に通じる道は、後世の道路の基本となっています。もちろん起点は近畿地方です。

この時代の七道(東海道、東山道、北陸道、山陰道、山陽道、南海道、西海道)というのは地方の名称ですが、道筋の名前にもなって後の世に残っていますね。
ただし道筋自体は、大部分が消失してしまっていて、断片的に残ってはいるもののたどることはできません。

歩ける街道としては、「日本最古の官道」と言われる竹内街道などもあります。

中世の街道

鎌倉幕府が成立すると、御家人たちが「いざ鎌倉」と各地から鎌倉に向かう道ができました。これらは一般に、「鎌倉街道」「鎌倉道」と呼ばれています。

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では、関東各地から御家人たちが鎌倉に集まってくる様子がうかがわれますよね。そう、千葉県から、栃木県から、埼玉県から……「すべての道は鎌倉に通じる」よろしく、あちこちから鎌倉に向かう道ができたのです。

といっても、ほとんどは正式に整備されたわけではなく、鎌倉に向かう時に使われた道が「鎌倉街道」「鎌倉道」と呼ばれたにすぎません。

やけにあちこちで「鎌倉街道」っていう文字を見かけるな……と思ったら、そのせいです。
「上路」「中道」「下道」の3路線が後世まで伝えられている幹線道路ですが、そこから派生する枝道も多く、現在でも主に関東一円のあちこちにその名残が見られます。

断片的だったり、伝承だったりとイロイロあるので、踏破する目的とは別に、コレクション気分で行ってみるのも面白いかもしれませんね!

近世の街道

いよいよ我らが「街道歩き」の主要テーマ。

江戸に徳川幕府が開府するとすぐに、幕府の道中奉行が直接管轄する五街道が、そしてそれに付属する主要街道が定められました。

それより前の時代から、街道はもちろんそれを利用した伝馬制もあったのですが、江戸幕府は改めて街道と伝馬制を整え、各街道沿いに宿場・継立や一里塚、並木などを整備したのでした。(伝馬制については、また後日あらためて。)

まったくもって、古今東西、国づくりにはまずインフラ!道路整備!と言ったところですね。今度は「すべての道は日本橋に通じる」の時代となったワケです。

この五街道と付属街道は、今でいうところの国道でしょうか。

ほかにも勘定奉行の管理する脇街道や(これも国道かな?)、藩などが整備した各地の道(こちらは都道府県道といったところか?)、それに庶民が商業や交流、信仰のために通った道などがあり、いずれも現在の道の基盤となっています。

「五街道」なんて名前を付けてくれたから、現代人にとってのお楽しみが増しているのかもしれませんねぇ♪

現代の街道

さてさて、時代は現代へ。

江戸幕府がなくなり明治政府が全国の道を整備するようになりまして、主要な街道は国道や都道府県道になって番号が振られることになりました。国道1号、国道2号、はたまた都道8号、なんて具合に。

けれど番号だけじゃ分かりにくいですよね……。現在でも通称として、「〇〇街道」の名称が使われています。
おおむね近世の道筋と街道名を踏襲していますが、交通量の増加や土木技術の向上によりルートを修正している場合も多く、道筋自体はちょっと(大きく、のところもあり)変わっています。
そのような街道では旧道区間は「旧〇〇街道」と呼ばれています。

(ここらへんのお話も、また機会をあらためて)

さらに最近では、旧街道以外にも、地域の愛称として「〇〇街道」という通り名で呼んでいることや、また観光客誘致や地域振興を目的として観光地やそれをつなぐ道に「〇〇街道」とつけていることもあります(例はこの記事の終わりの方に)。

鎌倉古道と伝わる道(東京都町田市)

街道の名前

街道の名前は、たいてい目的地または経由地を示しています。

ですので、道筋が別でも同じ目的地に向かう道に同じ名前がついていたり、道の付け替えによってルートが複数あったりすることが多々あります。

たとえば前述の鎌倉街道は、スタートは複数あってもゴールが鎌倉ならみんな鎌倉街道。ほかに、大山に向かう大山街道(後述)、日光に向かう日光街道など、同んなじ名前の街道はいっぱいです。

逆に、ひとつの道を地域によって(向かう方向によって)別の名前で呼んでいることもあります。「青梅街道」は西の方では「江戸街道」とも呼ばれています。青梅に近い地域から見たら、この道は江戸に向かう街道ですものね!

ちなみに近代に入ってから開通したり名前が付けられた道もあり、そのような新しい道でも「○○街道」という呼び方が通称として使われています。街道とついていたら全部が歴史の古い道筋かというと、そうでもないってことです。

道の通称としては、「〇〇通り」も一般的ですね!

特別な用途の街道

じゃあ〇〇街道の〇〇って、行先の地名ばっかり?? と言いますと、それもちょっと違いますよね。例外多数ってことで。

上述の通り、基本的には地名を付けたものが多いのですが、特別な目的や通行者のために名付けられたものもあります。

さきほどは時代ごとに「街道」を見てきましたが、今度は用途ごとに見てみたいと思います!

特定の目的のための街道

特定の通行者のために整備された道や、海沿いから山間地へ海産物を運ぶと言った物流の道などがあります。(道の成立した理由は名前の通りですが、たいていは一般庶民の往来にも利用されました)

  • 例幣使街道(例幣使道)……朝廷からの「例幣使」が利用した道
  • 御成道……将軍が利用した道
  • 鯖街道……海岸部で獲れた鯖を内陸部へ運んだ道。いくつかの街道で、通称として使われています
  • 塩の道……海岸部で採れた塩を内陸部へ運んだ道。鯖街道と同じく、複数の街道で通称として使われています

信仰のための街道

中世ごろには、熊野詣でなど各地の社寺への参詣のために旅をする人が増えてきました。
また、江戸時代になると伊勢参りをはじめとした参詣の旅が流行り、庶民までもがお参りと行楽を兼ねて旅をしました。

平和で安定した時代。ちょっと行楽に行ってこよ♪という気持ちが庶民にも芽生えるワケです。でも旅には名目が必要で、だからお参りでしょ!というワケです。まぁこのあたりのことは、また機会を改めて取り上げたいと思います。

で、ですね。あちこちからその「信仰の場所」へと行く人が現れます。自然、あちこちからそこに向かう参詣路ができます。

  • 伊勢路……三重県の伊勢に向かう道
  • 金毘羅街道・金毘羅道……香川県の金毘羅宮に向かう道
  • 大山街道・大山道……神奈川県の大山に向かう道

こうしてできた、各地からひとつの地点を目指す道は、多くが同じ名前で呼ばれています。地元の家族や親戚やご近所さんだけで呼ぶならいいのですが、現代の街道ウォーカーにとっては「どこから来る道なのか」を区別する必要がありますので、「大山街道・青山道」などと区別する呼び方も使われます。

スムーズな移動のための道とは限らない、というのもこのタイプの特徴です。
街道の多くはA地点からB地点へと早く楽に移動するために道を選んでいますが、たとえば大山街道などは大山の山頂の神社にお参りすることが目的ですので、最後は登山になったりします。ガンバッテ!

大山街道は、最後は本格的な登山になります

観光や地域振興のための街道

そして現代。上記の「現代の街道」のところで触れた、「観光や地域振興を目的」とする街道について。

現代は、観光客へのPRのため、名物や名所をつないだ道や観光地にも「○○街道」の名前が付けられています。

  • 日本ロマンチック街道……長野県上田市から栃木県日光市まで、観光地をつないだ約320kmの街道。ドイツのロマンティック街道を模したもの
  • そば街道、しらす街道など……名産地や名産品の店の多い地域で、全国各地にあります。たいていの場合は地域全体やいくつかの店舗をまとめたもので、特定の道筋を示すものではない
  • 桜街道、コスモス街道など……街道沿いに花が植えられた道筋で、桜、コスモス、アジサイなどいろいろ

これら観光目的の〇〇街道は、一筋の道に連なるとは限らず、地域でまとめたものもあります。

「〇〇道」が道筋ではなく地域の呼び名ってことは……「東海道」「東山道」が道の名前でなく地方名だった古代に帰ったのかも……なんてね!

おわりに

以上、ひとくちに「街道」と言っても、いろいろあるよ!というお話でした。ま、難しいことは考えずに、好きな道を歩きましょう~。すべての道は、日本橋に通じる……かも!

「街道歩きの用語集」では、このサイトや街道歩きの話題でよく出てくる言葉について取り上げていきます。ご意見ご感想リクエストもお気軽にどうぞ!

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